「描く」ということの究極のかたち

製品設計部
宗像博史

Intuosシリーズとは

「Intuos」は、このたび従来のIntuos5からモデルチェンジ したIntuos Proと、従来のペンタブレット製品である BambooがモデルチェンジしたIntuosからなるペンタブレッ ト・ブランドです。プロフェッショナルの使用を前提とした Intuos Proと、よりライトなIntuos、われわれはこの 「Intuos」という製品ラインを、グラフィックにクオリティ を求める方のためのブランドとして位置づけています。わた し自身は、2000年の入社以降、これらのペンタブレット── われわれは“板もの”と呼んでいます──のハードの開発に 携わってきました。

Intuosとの縁

Intuosの初代機は、わたしがこの会社に入社するちょっと前 に発売されています。学生時代のころから絵を描くことやグ ラフィックにも興味がありましたし、ペンタブレットも使っ ていました。ただ、自分がその後ワコムに入り、ペンタブレ ット、そしてこの最新のIntuos / Intuos Proの開発に関わ ることになるとは想像もしていませんでしたね。

Intuos Proまでの
その変化と進化

このIntuos Proへと繋がるこれまでの移り変わりを見ると、 非常に大きく変化してきていることを実感します。見かけは もちろんですが、性能、機能もかなり変わりました。最も大 きな変化のひとつとして、筆圧の感知性能の向上が挙げられ ます。初代Intuosの筆圧感知は1024段階でしたが、Intuos4 以降は2048段階になりました。2倍の細やかさで描き手の筆 圧の変化を繊細かつ精細に受け止められるようにすること で、筆先の表現を、それまでとは全くレベルの違うものにす ることが可能になりました。

Intuosに求められるもの

もちろん筆圧の変化だけではありません。Intuos4から Intuos5、そしてIntuos Proに至るあらゆる面での進化は、 グラフィックの世界の変化と、技術の進化、そして 「Intuos」というブランドに求められるものの変化に対応し たものでした。端的に、グラフィックのレベルはとにかく 年々高くなり、われわれが達成すべき目標値もどんどんと高 くなってきたと言うことができます。よりよい描き味、長時 間作業のしやすさ、操作性……考えられる限りのブラッシュ アップを繰り返しています。しかしもちろん、その過程はそ う平坦なものではありませんでした。

進化の裏側には

ペンタブレットの性能を向上させるためには、実は、外から はあまり見えない部分が非常に重要になります。たとえば筆 圧レベルが倍になるということは、単純に、扱うデータが倍 になるということでもあります。扱うデータが増えることに より、処理に時間がかかるようになります。処理に時間がか かれば描き手の体感に悪影響が出ますが、もちろんそれは許 されない。そして増えたデータを素早く処理するためには、 既存のICチップでは不可能であったりする。そのためには、 ICチップの開発をいちから始めなければなりません。

性能とスペースをめぐって

見えない部分といえば、スペースについての“戦い”も激し いものがあります。「Intuos」の製品ライン、特にsmallサ イズやmediumサイズは、機器内のスペースは限られていま す。その小さな中に、どんどんと高性能になる電子回路を組 み込んでいかなければならない。デザイナーや機構エンジニ アと、本当にミリメートル単位で場所をやりとりしつつ、デ ザインと性能、そしてコストのバランスを取っていきます。 領土争いというか、パズルのようで楽しいのですが、しかし やはり、大変な作業ではあります。

その想いはタブレット端末でも

iPadでの筆圧表現が可能になるIntuos Creative Stylusの ようにペンに特化した製品にも、様々なテクノロジーが導入 されています。最も難しかったのはペン先だったかもしれま せん。タブレット端末の画面とペン先との関係を保ちつつ、 描き味よく、それでいて一日ずっと使っても耐えられるペン 先を実現するためには、これも素材のレベルから考える必要 がありました。柔らかさ、太さ、デザイン性など、あらゆる 角度から検討が加えられて今の形が実現された、という感じです。

クリエイターの作品が
開発者の喜び

開発者としての喜びは、もちろん、われわれが開発した製品 を使ってつくられた作品を見ることですね。これは本当に嬉 しい。そしてIntuos Proを使ってそれらの作品をつくってい るところを実際に見ることができれば、嬉しさも倍増するか もしれません。クリエイターの方々がわれわれの開発したツ ールを使って素晴らしい作品をつくっていただくことは、本 当に、われわれ開発者にとってもとても大きな励みになるも のなのです。苦労してよかったな、努力が報われたな、こう いうツールをつくっていて、本当によかったな、という気持ちになりますね。

究極の描き味を追求したい

わたしの今後のテーマとしては、やはり、ペンタブレットの 描き味を、紙に描く感覚にどこまで近づけることができるか ということですね。描きやすさや描き味といわれるものに は、なかなか数字化できない、非常に微細で感覚的ななにか が、とても大きな役割を果たしているもののようです。 Intuos Proでは、“描く”ということの究極のかたちを、こ れまで以上に一層追求していくことができればと思いますね。

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