人々の記憶に残る写真でポジティブインパクト

人々の記憶に残る写真でポジティブインパクト

3階建てのビルに相当する高さにある巨大な蛇口から、無数のペットボトルやプラスチック容器がとめどなく流れ出す。そして、その激流の下に身を置いているかのようなシーン。

これは環境問題をテーマにした新しいホラー映画の一コマではない。地球という惑星の厳しい現実である。新型コロナウイルス感染症の世界的流行のなかで、使い捨てプラスチックの消費量は2.5倍近く増加した。また、これまでに生産されたプラスチックの80%以上がそのまま埋め立てゴミになっている。それに輪をかけて問題なのが、リサイクルできない汚染プラスチックごみが毎年数百万トン単位で貧困国に輸出されていることである。今や手に負えないくらい膨れ上がったゴミは、暴れ回る野獣のよう。うまく手なずけて檻に戻すには、どんな対策を打てばよいのだろうか。解決策は至ってシンプル。プラスチックの消費を減らせばよい。カナダ出身のアーティストで写真家のBen Von Wongは自称「ゴミ収集員」。活動家として、プラスチック生産に対する反対運動にも取り組んでいる。そして、#TurnOffThePlasticTapへの参加を世界に向けて呼びかけている。

現実を映し出す

冒頭にゴミを吐き出す蛇口のことを述べたが、これは例え話ではない、現実だ。在仏カナダ大使館の後援のもとに、家族や数百人のボランティアの協力を得ながら、Benは100%リサイクル可能な移動式インスタレーションを制作した。それによって、プラスチック生産が世の中に与える影響を世界に訴えようというのである。この「蛇口」の材料は、取り壊し直前のビルから回収した重量90kg強の換気ダクト。蛇口からはトラック1台分のプラスチックが流れ出す。それぞれのパーツがペットボトルから作られたロープでつながれている。複数の場所で撮影するために、作品は分解して移動できるようにした。そのために、インスタレーションを組み立てる前にプラスチックパーツを分別し、穴を開け、糸でつなぐ作業が必要になった。

おまけに、巨大な蛇口の撮影方法も「グリーン」だ。「高さのあるインスタレーションなので、蛇口に照明を当てるのも大変です。ボランティアたちが提供してくれた鏡を使うのが最も手っ取り早くて、安価でした。また、現場の光を拡散させて幻想的な雰囲気を醸し出すために、養蜂用の燻煙器を使用しました。有機干し草を焚いて煙を出す、シンプルな構造のものです(発電機を使うよりも環境に優しい)」。

ミッション

プラスチックを吐き出す巨大な蛇口は、さらなる運動の出発点に過ぎない。環境意識の向上を目指すBenは、「蛇口」作品の複製可能なデジタルファイルを加工用に提供している。この驚くべきインスタレーションに触発された人々がそれを使って独自のリミックス作品を制作できるようにするためだ。さらに、Benはプロジェクト参加者への賞金として1万ドルを自身で調達した。「忘れがたいポジティブインパクトの輪を広げることが自分の使命だと思っています」と彼は語る。

#TurnOffThePlasticTapのインスタレーションとイニシアチブをもっと知りたい?なら、Benのインタビューで、撮影の裏側をのぞいてみよう。

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