空白のキャンバスがブラックホールに見える?

空白のキャンバスがブラックホールに見える?

まっさらな画面を前にして、頭の中が真っ白になる経験は誰にでもあるはず。今までにない新時代のキャラクターを創造しようと、空白のキャンバスに向かうときのことを考えてほしい。真っ白なキャンバスが無限の可能性ではなく、ブラックホールのように思えるかもしれない。その闇に吸い込まれず、何も描かれていない画面にどう向き合ったらよいか。コンセプトアーティストでイラストレーターでもあるAnthony Franciscoがその秘訣を語る。マーベルスタジオのビジュアル開発アーティストの彼は、「ベビー・グルートのビジュアルの生みの親」ともいうべき存在だ。「ブラックパンサー」のドーラ・ミラージュ(親衛隊)、オコエ、ナキア、「マイティ・ソー・バトルロイヤル」のロキ、その他にテイザーフェイス、ティーン・グルートを手がけるなど、輝かしい経歴をもつ。

創造のパイプラインに導く

まず、興行収入が数十億ドルという、これら超大ヒット作品の誕生の経緯をたどってみよう。ビジュアル部門の仕事は通常、制作プロセスの最初に来る。つまり、Anthonyは「創造のパイプライン」の第一チェックポイントのひとつとなる。ビジュアル開発アーティストは、架空の世界のイメージを作り上げ、そこに住むキャラクターの外見や雰囲気を決める。キャラクターを細部まで作り込むには、幾度となく試行錯誤を繰り返す必要がある。映画に登場する姿になるまでには、少なくとも200回のバージョンアップを経ている。

経験、そして想像力

では、ビジュアル開発アーティストは、空白のキャンバスの沈黙をどう破るのだろうか。Anthonyによれば、経験がものを言うという。「これらのキャラクターの制作では自らの経験が頼りです。たとえばベイビー・グルートのイメージに辿り着くまでに、我が子を随分、参考にしました」と語る。衣装のデザインには、フィリピン系という自己のルーツが活かされている。「ブラックパンサー」でドーラ・ミラージュが身に付けているのは、ルソン島北部の先住民族であるイゴロット族の伝統衣装がモデルになっている。「人生のなかで経験したさまざまな心の動きがヒントになることも多いですし・・・アーティストの成功はもてる想像力の幅にかかっています」

アイデアに行き詰まりがちな創り手のために、Anthonyが提案するのが独自の「クリーチャー・ピラミッド」。若手のビジュアルアーティストが新しいキャラクターを構築するときに、特定の要素に的を絞って検討するのに役立つという。セッションではAnthonyによるクリーチャー・ピラミッドのデモもある。必見のコンテンツだ。

今回オンラインで登壇するAnthonyは、コンセプトアートの全体像を明らかにしつつ、どうやったら白紙の状態から有力なキャラクターを構築できるのかを語る。クリエイターとしてのAnthonyが辿る道程(ジャーニー)の魅力は尽きない。そして、セッションではその創造のプロセスが明らかにされる。

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