Sペンが紡いできたサムスンとワコムの歴史

Sペンが紡いできたサムスンとワコムの歴史

世界最大級のエレクトロニクス・メーカー、サムスン電子は、コネクテッド・インクの初回からの主要スポンサーでもある。数々の製品や部品を開発・販売し、中でもスマートフォンは同社の事業の中でも重要な柱のひとつ。世界市場でのシェアランキングにおいても、常にトップ争いに名を連ねる。

サムスンとワコムの歴史は、10年以上にわたる。ワコムがサムスンにOEM提供するデジタルペンソリューション、その名も「Sペン」は、年を追うごとに進化を遂げながら、搭載機種を増やしており、Galaxy Noteシリーズの他にも、同社のタブレットやPCなど、Sペン対応の製品は実にたくさんある。

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Sペンの歴史を振り返る

2011年に発売されたGalaxy Note初代機 (写真)は、初めてSペンが同梱され、Phablet (Phone + Tabletの造語)というカテゴリーを生み出した。ノートパッド機能において、Sペンは、鉛筆、ペン、ブラシ、ハイライトマーカーなど多様な役割を果たす。2012年のGalaxy Note2では、筆圧感知レベルが1024段階と4倍になり、より精緻に書き手の意図を表現することが可能になった。

2013年のGalaxy Note3で、Sペンは書く機能の進化に加え作業性を上げる役割も果たしている。「エア・コマンド」メニューでは、Sペンをスロットから取り出してサイドスイッチを押すだけで、様々な機能に瞬時にアクセスできるように。この機能によって、電話をかけるのも、メールを送るのも、写真にちょっとしたことを書き込むことも簡単にできるようなった。

2014年のGalaxy Note4では、Sペンはさらに書き味のリアリティを追求し作業性も高め、筆圧感知レベルは2048段階と2倍に。スマートセレクト機能では、Sペンでコンテンツを作り、様々なデータとつなぎ合わせて知人に共有するなど、クリエイティブな使い方が充実した。

ここで、ちょっと豆知識。Sペンに採用されているEMRという技術は、世界中のクリエイターやデザイナーなどが、コンピューターで作品を描く際の必須アイテムである、ワコムのペンタブレットの技術がベースになっている。クリエイティブの猛者たちに認められたペンの技術を、モバイルIT機器向けに最適化して提供していることになる。

2015年、Galaxy Note5 (写真)では、画面がロックされた状態のままでも、Sペンを使ってアイデアやメモ書きを即座にスクリーン上に書きとめ、保存することができる「スクリーンオフメモ」機能が登場。Sペンを取り出しやすくる機構的な工夫と相まって、電話中に急にメモが必要になっても、慌てずに必要事項を書き留めることができるようになった。

一年置いて2017年、Sペンはユーザーの表現力を飛躍的に高めることになる。Galaxy Note8で導入された「ライブメッセージ」機能では、Sペンで手書き入力したテキストや絵を、アニメーションGIFにして、メッセージやSNSで友人と簡単に共有できる。

2018年のGalaxy Note9 (写真) では、Sペン自体に、初めてBluetooth LE(Low-Energy)を搭載。自撮りのセルフタイマー、ビデオや音楽などのコンテンツ操作、プレゼンテーションのスライド送り(戻し)などを、クリック操作だけでできるようになった。

2019年のGalaxy Note10のSペンでは、「エア・アクション」機能を実現。ジェスチャー操作でカメラのイン/アウト切り替え、ズームイン/アウト、音量調節など、様々なリモート操作が画面に触れることなくできるようになるという点が画期的であった。

2020年には、Galaxy Note20 (写真) が登場。サムスンのAIと連携することにより、より精緻な位置検出が可能なほか、描写時のレイテンシー(遅延)を8割も短縮し、手書き機能はさらに洗練。また、Sペンを一振りすることで、アプリを呼び出したり、ホーム画面に戻るなど、あたかも「指揮棒」のようにも使えるようになった。

2021年、Sペンに起きた大きな二つの動き

そして、2021年。Sペンは、大きな2つの進展を見ることになる。まず、1月に、発売されたGalaxy S21 Ultraで、Sペンが採用された。Galaxy Noteシリーズと並んで同社スマートフォン事業をけん引するGalaxy Sシリーズとしては初めての採用となった。8月には、折りたたみ式液晶画面のGalaxy Z Fold3 (写真)でもSペンが搭載される。メインディスプレイを開くと7.6インチという大画面。ペン用のセンサーを折りたたみ式に対応するには高度な技術が必要となったが、サムスンとワコムのエンジニアの見事な連携で、乗り越えることができた。こうして実現した折りたたみ式液晶画面のおかげで、ユーザーはビデオコールをしながら画面に走り書きでメモをしたり、電子メールを読みながら「やることリスト」を確認したりすることが、手軽にできるようになった。また、大画面を活用することで、クリエイティビティを生かすことができ、作業の効率性を大幅に向上することに寄与している。

共に刻むマイルストーン

サムスンとワコムの揺るぎない協力関係により、Sペンは今後も進化し続け、画期的なソリューションを提供していくだろう。サムスンのIT & モバイルコミュニケーション部門で、テクノロジー戦略を統括しているバイス・プレジデントのインカン・ソン氏は、以下のようにコメントを寄せている。

「サムスンとワコムがSペンを生み出してから、両社は強固な協力関係によって、業界をリードする数々の進化を成し遂げてきました。今年発売したGalaxy Z Fold3では、我々がほれ込んでいるSペンのテクノロジーを、初めて折りたたみ式の製品に搭載し、未来志向の両社の協力関係に、また一つ偉大なるマイルストーンを刻むことができました。お客様にとって、テクノロジーがいつまでも身近なものであり続けるよう、両者で協力して新たな技術のイノベーションを提供し続けていきたいと思います。」

Sペンの「エコシステム」は、今や、サムスンのスマートフォン、タブレット、ノートPC(Galaxy Book Pro 360、写真)、多岐にわたる製品カテゴリーに及んでおり、サムスンとワコムの連携によって今後はさらに幅広いポートフォリオをカバーすると同時に、お客様により豊かで深い体験をお届けしていくことは、想像に難くない。

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