TCFD提言に基づく
情報開示

TCFD提言に基づく情報開示

1. 目的

ワコムは、持続的な企業価値の向上を図るとともに、持続可能な社会の実現に貢献するにあたり、気候変動問題を重要な要素の一つとして捉え、2023年4月13日にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明いたしました。TCFDの提言に基づき、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」に関する情報開示を推進し、今後ともサステナビリティに関連した内容の充実を図ってまいります。

2. ガバナンス

ワコムでは、気候変動をはじめとするサステナビリティ関連の重要課題に関して取締役会が適切に監督・助言を行うため、ESGタスクフォースを設置しています。定期的に開催するESGタスクフォースでは、サステナビリティ関連の具体的な方針や戦略、施策、環境目標への達成状況等が検討され、代表取締役社長兼CEO、取締役兼CFO、環境推進責任者、コンプライアンス リスク コミッティ事務局、IR担当者等が参加しています。ESGタスクフォースで議論された内容のうち、特に経営上のリスクや機会にかかわる重要事項については、社外取締役を含む取締役会に年次をベースとして適宜報告されます。

3.戦略

ワコムでは、ESGタスクフォースにて気候変動関連リスク及び機会の特定・評価に必要なデータやパラメータの収集を行い、事業への影響度の分析を行っています。 事業への影響度と対応策について考察・分析にあたっては、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表するシナリオを用い、異なる2つの将来世界観における2030年時点の影響を分析しています。

4℃シナリオ 1.5℃シナリオ
経済活動が優先され、気候変動対策に関しては消極的なシナリオ。政府による気候変動関連の政策・規制は進展せず、今世紀末時点で世界の平均気温は産業革命期と比較して4℃上昇し、慢性的な気象変化や異常気象災害による物理的な影響が拡大する。 脱炭素社会実現に向けた取り組みが積極的に進められるシナリオ。今世紀末時点で世界の平均気温の上昇が産業革命期と比較して1.5℃に抑えられるよう、2050年カーボンニュートラル達成を目指して政策・規制の強化が進むとともに、市場においてもエシカル消費をはじめとした購買行動変化や技術革新など、脱炭素化への移行が進む。
(参考シナリオ)
IPCC第5次評価報告書(AR5)RCP8.5
IEA WEO2021 STEPS
(参考シナリオ)
IPCC第5次評価報告書(AR5)RCP2.6
IEA WEO2019 SDS、NZE2050

 

<4℃シナリオにおける影響評価>
4 ℃シナリオ分析では、自然災害の発生頻度が高まることによる拠点の直接的被害や営業停止に伴う損失、平均気温上昇による空調コストの増加などが想定されます。特に自社拠点だけでなく製造委託先工場への被害も考えられ、主に洪水をはじめとした異常気象災害による直接的な被害は重大な影響リスクの1つとして評価しています。
一方で、 異常気象の激甚化や平均気温上昇の影響によりウェブ会議システムな どが活用される場合、自社製品の需要増加に伴う増収につながると考 察しています。今後、サプライヤーとのエンゲージメントを通し気象災害に対するレジリエンス性向上を進めるほか、BCP対策の継続的な見直しを通して対応策を検討してまいります。

<1.5℃シナリオにおける影響評価>
1.5℃シナリオ分析では、炭素税導入や電力価格の高騰に伴う費用の増加など、支出の増加を主なリスクとして想定しています。ワコムの事業形態やCO2排出量実態を踏まえた分析では、これらの直接的な追加支出増による財務影響は軽微だと判断しているものの、国境炭素税の導入による追加支出や製造や輸送に関わる業務委託先でも同様の影響から追加支出分の価格転嫁が想定され、間接費の増加を想定しています。一方で、省エネ性能の高い製品や環境に配慮した素材を使用した製品の需要増加やエシカル消費を始めとした社会問題や地球環境に配慮したサービスへの需要増加は、そのニーズに対応した製品・サービスの提供が事業機会となり得る可能性を認識しています。例えば、社会全体でペーパーレス化が推し進められた場合、企業、自治体、教育現場、クリエイターなど様々な場面で各種ペンタブレットの需要が増加することが想定されます。ワコムでは、かねてより再エネの活用などを進めており、排出量の削減に取り組んでいますが、今後これらの取り組みを一層促進させていくとともに、さらなる対応策を検討してまいります。

区分 要因 事象 分類 時間軸 評価 対応策
4℃シナリオ 1.5℃シナリオ
移行リスク カーボンプライシング ・炭素税をはじめとするカーボンプライシングの導入により操業にかかるコストの増加 リスク 長期 - ・再生可能エネルギーの導入
・CO2排出量目標設定
・照明のLED化をはじめとする省エネ対策
・ 国境炭素税及び製造や輸送に関わる業務委託先での炭素税導入に伴う価格転嫁による間接費の増加 リスク 長期 - 小* ・業務委託先の再エネ促進
エネルギーコストの変化 ・ 再生可能エネルギーへの転換に伴う電力コストの増加リスク リスク 長期 - ・照明のLED化をはじめとする省エネ対策
・省電力の設備への入れ替え
顧客行動の変化 ・環境に配慮した製品の需要増加
・ ペーパーレスの推進による各種ペンタブレット需要の増加
機会 中期 - 中* ・省エネ性能の高い製品などの開発、販売
・ 教育現場やビジネスなどへのターゲットの拡大
・ペーパーレス化に伴う顧客ニーズへの対応
物理的リスク 異常気象の頻発化 ・洪水や高潮による自社拠点への直接的な被害
・拠点被害による営業停止に伴う損害
リスク 長期 ・BCP整備による店舗・事業所のレジリエンス強化
・リモートワーク制度の整備
・ 在庫を保有している委託先工場への洪水や高潮による被害
・委託先工場被害による営業停止に伴う損害
リスク 短期 大* 中* ・安定した調達手段の検討
・ サプライチェーン全体のBCP対策状況の把握
・外出機会の減少により、リモートワークの増加 機会 長期 小* 小* ・ 教育現場やビジネスなどへのターゲットの拡大
平均気温の上昇 ・空調使用量の増加 リスク 長期 ・高効率な空調システムの導入

<時間軸の定義>
短期:0~1 年 中期:1~5 年 長期:5~10 年;
<影響度評価の指標>
「大」「中」「小」は影響度の評価結果を表しています。  評価結果に*がついているものは、定性評価による評価結果です。なお、各事象のおける影響度の評価は個別の条件の元で記載したものであり、相互間の関係性については考慮していません。

 

   

注1:2021年度の営業利益を2030年の営業利益と仮定し、2030年時点における影響額を試算
注2:物理的リスク(国内)は洪水被害、高潮被害、営業停止による影響額の合計で試算。
注3:物理的リスク(海外)における営業停止損害額を試算することができなかったため、洪水被害、高潮被害の影響額の合計で試算。

4.リスク管理

ワコムではリスク管理体制として、グループCEOを委員長としたコンプライアンス リスク コミッティを設けており、ワコムの海外現地法人を含めた各部門の管理者は、リスクの発生及び予測されるリスクに重要な変化があった場合、当組織に報告することを定めています。気候変動問題リスクの特定・評価はESGタスクフォースが実施しており、ワコムに重大な影響を与え得るリスクについてはコンプライアンス リスク コミッティと共有及び連携の上、最小限 に抑えるため適切に管理・監督を行っています。これらの活動はグループCEOから取締役会へ定期的に報告されています。

5.指標と目標

気候変動への対応については、気候変動イニシアティブ(JCI)に参加するとともに2050年のカーボンニュートラルの達成に向けて、中間目標として2030年度に達成すべきCO2排出量目標を設定し公表しています。再生可能エネルギーの早期導入を検討すると共に、2014 年度を基準年※1として2030年までに48%のCO2を削減し、715 t-CO2以下にすることを目指します。
※1 2013年度にオフィスの移転や拡張が行われた経緯を踏まえ、2014年度を基準年度として設定しています。

CO2 排出量削減活動

2021年度は、本社の照明のLED化やテレワーク等を推進することにより、CO2排出量が914 t-CO2となり、目標値(1032 t-CO2/目標変更前の目標値は、1151t-CO2)を超えて大きく削減することができました。エネルギー原単位の削減は目標として設定していませんが、実績の推移を公開していきます。2012年度~2021年度のCO2排出量推移につきましては、環境パフォーマンスの項目をご覧ください。 尚、2021年度から海外拠点の環境パフォーマンスデータの収集を開始いたしました。収集可能なデータがほぼ特定できましたので、把握できたものから順次公開いたします。今後は、CO2排出量削減のために実行可能な施策を検討すると共にグローバルでの目標設定を検討していきます。
2022年11月8日から本社にて彩の国ふるさとでんき(卒FITの自然エネルギー電力活用)の導入利用を開始いたしました。これにより2022年11月以降の本社のCO2排出量(Scope2)はゼロになる見込みで、2022年度の環境パフォーマンスデータに反映される予定です。

電力使用量(日本)

•電力使用量は、国内の全事業所について集計

 

CO2排出量(日本)

•    CO2排出量(スコープ2)は、購入電力のみのため、「特定排出者の事業活動に伴う温室効果ガスの排出量の算定に関する省令」の排出係数を用いて算定。各事業所が所在する地域において電力供給を行っている一般送配電事業者(本社と東京支社は東京電力エネジーパートナー株式会社)の各年度の調整後排出係数を使用。

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