誰もが創造力を発揮できる場を/ワコム・エクスペリエンス・センター


地域のクリエイティブ・コミュニティーとの交流を目的に生まれたワコム・エクスペリエンス・センター・ポートランド。「誰もが自由に創造力を発揮できる場を作りたい」という思いから始まったこの空間には、新進気鋭のアーティストから世界で活躍するクリエイターまで、創造性をキーワードにさまざまな人が集まります。

ポートランドのクリエイティブ・コミュニティーにとって、そしてワコムにとって、エクスペリエンス・センターとはどのような存在なのでしょうか。2016年の立ち上げから旗振り役を務める、メーガン・デイビスの心の灯りとともに紹介します。

 

ワコム・エクスペリエンス・センター・ポートランドについて教えてください。

メーガン:ワコム・エクスペリエンス・センター・ポートランド(以下エクスペリエンス・センター)は、アメリカ・ポートランドのクリエイティブ・コミュニティーとの交流の場です。100人ほど収容できるスペースで、イベント、ワークショップ、講演会など、さまざまな催しを行っています。

エクスペリエンス・センターは、地域のお客さまやクリエイターと関わる場を作ろうと、2016年に開設されました。地域のコミュニティーとの交流を通じて、創造性を育み、イノベーションを促進し、人々にインスピレーションを与える場所でありたいと考えています。

 

2016年のスタートから有機的な成長を続けていますが、どのように交流の場を広げてきたのでしょうか。

メーガン:エクスペリエンス・センターのビジョンとコンセプトを身近な人たちに知ってもらうことから始めました。アートスクールに勤めていた前職での経験や、クリエイターとしてコミュニティーの一員であった経歴を活かして、アニメーション、デザイン、コミック、ゲーム開発などに携わる知人や学生たちにまず声をかけました。彼らはワコムユーザーでもあったので、エクスペリエンス・センターの可能性を理解してもらうのに時間はかかりませんでした。試行錯誤の繰り返しでしたが、次第に名前を知ってもらうようになると、少しずつ交流の場を広げていけるようになりました。

スピーカーやプレゼンターの質の向上も大きく寄与しています。世界で活躍する映画プロデューサーやフットウエアデザイナーなど、才能に溢れたさまざまな方をお招きしてきました。エクスペリエンス・センターの場所としての可能性を感じてもらえたことで、より多くの人に参加いただけるようになりました。

また、コミュニティーでの実績から、地元の劇場やスタートアップ企業など、他のクリエイティブ団体をサポートすることもできるようになりました。継続的な取り組みがクリエイティブ/テクノロジー・コミュニティーを支える存在としての評価につながっていると自負しています。

 

ゼロからの立ち上げには大きなエネルギーが必要かと思います。どのような思いでここまできたのでしょうか?

メーガン:あらゆる人が歓迎される空間にしたいと考えていました。ショールームでもあり、クリエイティブ・ワークスペースでもあり、誰かの「何かやりたい」を実現できるような。ポートランドのクリエイティブ・コミュニティーはあらゆる人たちに開かれていて、若いクリエイターの成長を応援するメンターシップの精神にも溢れています。その道しるべとなるような空間がそこにあれば、自然と人は集まるだろうと考えていました。

ワコムはデジタルテクノロジーの会社ですが、デジタルに限らず、創作したいという方を歓迎しています。エクスペリエンス・センターでも同様に、あらゆる創作を支えるという姿勢を大切にしています。新たな道具としてワコム製品を紹介することもできるのですが、私たちは常に、さまざまな創作の在り方を理解し、クリエイターのスキルや創作方法にとって最適なサポートを提供したいと考えています。

 

クリエイティブ・コミュニティーにとって、ポートランドという場所が持つ意味も大きいようですね。

メーガン:ポートランドは、小さくて、大きな街です。創造性を育み、必要とする産業がたくさんあります。クリエイターにとっては、大都市にいるとそれだけで圧倒されてしまうことがあるかと思いますが、小さな町のような雰囲気があれば、どこにいても自分の作品を作り上げることができると感じられるのではないでしょうか。クリエイティブな仕事は非常にハードで、クリエイターたちは皆、とても不安で繊細です。ですから、この街の一部であると感じることができ、けれどそこまで圧倒されるほどではないということが重要なのだと思います。

 

これまで数々の取り組みを行っていますが、特に印象的な取り組みはありますか?

メーガン:ひとつは、2016年にPENSOLE ACADEMYというフットウエアのデザイン学校とともに立ち上げた「スニーカーウィーク」です。スニーカーウィークは、ポートランドのスニーカー・コミュニティーとフットウエア業界をつなぐことを目的に始めたフェスティバルです。エクスペリエンス・センターでは毎年、フットウエアデザイナーや業界のリーダーたちを招いた講演会やデザインワークショップなどを行い、クリエイティブ・コミュニティーや、テクノロジー、イノベーションに興味を持つ人びととの交流を深めています。

フットウエアデザイナーを目指す場合、一般には工業デザインを学ぶことになりますが、それは必ずしも業界に特化したものではありません。Pensoleは、そのギャップを埋めようと、フットウエア業界に特化した教育を始めたところでした。大のスニーカー好きでもある私は、Pensoleのマーケティング・マネージャーとすぐに意気投合し、スニーカーウィークのアイデアを思いつきました。ポートランドには、有名なフットウエアブランドがたくさんあります。また、ユニークなことが大好きな街で、ピザウィーク、ドーナツウィーク、バーガーウィークなど、面白いフェスティバルがたくさんあり、スニーカーウィークを祝わない理由はありませんでした。招待制の小さなイベントとして始まり、今ではポートランドでも最大規模のフェスティバルのひとつです。

 

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もうひとつ紹介したいのは、「ローズシティ・コミコン」というポートランドで行われているコミックコンベンションです。エクスペリエンス・センターとして、8年前から参加しており、Artist Alley(アーティスト・アレイ)と呼ばれるエリアにステージを設け、新進気鋭のアーティストをサポートしています。通常、Artist Alleyでは、インディペンデント・アーティストが作品を販売したり、著名なアーティストによるデモやトークが行われます。若手のアーティストはその外側のエリアを使うのですが、集客が難しく、展示をしても来てもらえないということが珍しくありません。そこで私たちは、Artist Alleyの中央にステージを設け、若手のアーティストたちが自分の作品について話したり、デモを行える場を作りました。それをきっかけにアーティストの展示会場へと足を運んでくれるお客さまもいて、アーティストの成長を応援する場になっています。

 

なぜコミュニティーとの交流がワコムにとって、エクスペリエンス・センターにとって、重要なのでしょうか。

メーガン:「Think Global Act local」(世界を意識して、地域で行動する)という言葉が、コミュニティーの意義を要約していると思います。誰もがどこからでも発信できる今、私たちにできることは無限にあります。しかし、信頼できるコミュニティーと安心して創作に取り組める環境がなければ、グローバルな規模でのインパクトを起こすことは難しいでしょう。エクスペリエンス・センターでは、対面でもオンラインでもイベントを開催していますが、そのバランスを大切に考えています。特にオンラインイベントでは、ポートランドという地域を越えて、多くの方々と交流の機会がありますが、私たちの活動の中心は、ポートランドのクリエイティブ・コミュニティーをサポートすることです。ここポートランドのクリエイターが、自分の作品について話し、応援してもらえる場があると実感できるように、取り組みを行っています。そして、彼らの経験やスキルが、ポートランドを越えて、より大きなグローバルコミュニティーへと広がっていくことを願っています。

もしもこの世界にクリエイターがいなかったら、それはとても、とても悲しいことだと思います。創造性は日々の生活にとって大切で、私たちが仮に誰か一人に、「素晴らしい作品ですね」と伝えることができれば、その人を勇気づけることができるかもしれません。地域のコミュニティーとつながりを深め、世界中のあらゆる人たちが創作を続けていけるように、インスピレーションを与え続ける存在でありたいです。

 

エクスペリエンス・センターでは、毎日のように催しが企画され、コミュニティーとの交流が行われています。準備や運営の忙しさもある中で、自身を突き動かす原動力は何だと思いますか?

メーガン:自分でも正気とは思えません(笑)ひとつに、素晴らしいチームの存在です。彼らがいるから、これまでにお話した、さまざまなことを実現することができています。そして、何よりも、エクスペリエンス・センターに集まる人々と、そこで起こるシナジーを眺めることが好きなんです。誰かが道具やリソースやアクセスを手に入れて、何かを創り出すのを見ていると、本当に刺激を受け、感動します。先日もGame Jamというイベントに50人近くの方が集まりました。初めて出会った人たちとチームを組み、2週間でビデオゲームを作ろうという催しですが、ゲームを作ったことがないファッションのプロフェッショナルに、「そのシャツかっこいいね。で、一緒にゲームを作らない?」と言って、「いいね!」とビデオゲーム作りが始まるんです。こういう瞬間に出会えることや、このようなクリエイティブ・コミュニティーの存在がワコムで働く最大の魅力だと思います。

2021年には、ドイツのデュッセルドルフに二つ目となるエクスペリエンス・センターができました。ポートランドでの実績があったからこそ、新たな地域でもエクスペリエンス・センターを開設することができたのだと思います。今後ますます取り組みを深め、世界中にもっとたくさんのエクスペリエンス・センターを作ることが私の目標です。

 

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プロジェクト一覧

私たちの灯り‐Join The Journey/Arian Rahmatzai

チームメンバーやコミュニティーの方々の作品を紹介する「私たちの灯り」。ワコムでインターンを体験したArian Rahmatzaiさんが、日本をテーマに描いた作品を紹介します。

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クリエイターになりたい-子どもたちの未来を応援する1

クリエイターになりたいという子どもたちの夢はチームメンバーの心の灯りと重なり、多くの取り組みにつながっています。鹿児島県錦江町のアニメーション制作ワークショップに協力しました。

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クリエイターが安心して創作を続けられる世界を目指して/Wacom Yuify

目に見えないマイクロマークを作品に埋め込むことでクリエイターの創作の証を記録するサービス、Wacom Yuify。地域や文化によって異なるクリエイターの要望に応えようと開発を進めています。

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デジタルインクテクノロジーをより多くの人に届けたい/中国での取り組み

デジタルインクテクノロジーの認知拡大と普及を目指すInk Division。中国で唯一のプロダクト・マネージャーとして挑戦を続けるラニー・ジャンに取り組みに対する思いを聞きました。

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私たちの灯り‐昼下り海辺で/sammy

「私たちの灯り」では心の灯りをテーマにチームメンバーの作品を紹介してきました。今回は「かくこと」を軸にともに取り組みを進める神奈川県大磯町のアーティストによる作品を紹介します。

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誰もが創造力を発揮できる場を/ワコム・エクスペリエンス・センター

コミュニティーとの交流を目的に生まれたワコム・エクスペリエンス・センター・ポートランド。その旗振り役を務めるメーガン・デイビスの心の灯りとともにこれまでの成長を振り返ります。

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ただここで起こることがすべて/コネクテッド・インク2022

二つの大きな問いかけとともに開幕したコネクテッド・インク2022。東京で開催されたいくつかのセッションを紹介しながら振り返ります。

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私たちの灯り‐光を運ぶ風/棕櫚

「私たちの灯り」では心の灯りをテーマにチームメンバーの作品を紹介してきました。今回は「かくこと」を軸にともに取り組みを進める神奈川県大磯町のアーティストによる作品を紹介します。

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「かくこと」を支え続けたい/大磯町との取り組み

神奈川県大磯町とのコラボレーションは「かくこと」を軸に町全体の取り組みへと広がりをみせています。担当するクリエイティブBUの坪田直邦に話を聞きました。

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コネクテッド・インクという多面体の側面-2

チームメンバーの心の灯りを起点に、コネクテッド・インクという多面体の一面を覗いてみます。二人目は、Corporate Engagementを担当する桧森陽平です。

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コネクテッド・インクという多面体の側面-1

チームメンバーの心の灯りを起点に、コネクテッド・インクという多面体の一面を覗いてみます。一人目は、2016年から企画運営の中心的役割を務めるハイジ・ワンです。

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社会に存在する障壁を乗り越えるには?/コール・アンド・レスポンス

2021年9月、ワコムは、株式会社ヘラルボニーと一般社団法人コネクテッド・インク・ビレッジと共に、「コール・アンド・レスポンス」(呼びかけと呼応)という新たな取り組みを始めました。

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余韻の中に残るもの/コネクテッド・インク2021

当日行われた70近いセッションの中からオープニングとフィナーレを振り返り、コネクテッド・インク2021がもたらしたものについて考えてみます。

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私たちの灯りー“The spark of love” by Jacky Yang

「心の灯り」をテーマに、二回目となるアートコンテストを開催しました。思いもよらぬ出来事にさまざまな変化が起こる中、今、そして未来へと続くチームメンバーの心の灯りを作品を通して紹介します。

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問いを立て進み続ける/
コネクテッド・インク2020

「コネクテッド・インク2020」は、終わりなき問いを続けていくワコムの新たな覚悟であり、挑戦の始まりでした。

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物語をつないでいく舞台「ステージKOPPA」

コネクテッド・インク2020の舞台として制作された「ステージKOPPA」。多様な場面に応じて、形や役割を変化させ、そこで起こるさまざまな物語をつないでいくステージです。

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私たちの灯りー“Mam and Dad’s Child Interest” by Stella Wang

「心の灯り」をテーマに、二回目となるアートコンテストを開催しました。思いもよらぬ出来事にさまざまな変化が起こる中、今、そして未来へと続くチームメンバーの心の灯りを作品を通して紹介します。

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私たちの灯りー秋山でのひととき/山本高廣

私たちの取り組みで大切にしている「灯り」をテーマに、チームメンバー(社員)を対象にしたアートコンテストを開催しました。チームメンバーによる投票で選ばれた三作品を紹介します。

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ステイホーム期間中に小学生向けオンラインお絵描き教室を開催

新型コロナウィルス感染拡大防止のため、外出自粛をしていた子どもたちに何か楽しい時間を提供したい。FC KAZOとイラストレーター・すいいろさんと共に、小学生を対象としたオンラインお絵描き教室を開催しました。

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サッカーを通じたワコムの新たな取り組み

FC KAZOと共にチームと地域を育てたい。ワコムは埼玉県加須市のフットボールクラブ「FC KAZO」のオフィシャルパートナーとして活動を支援しています。

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私たちの灯り-"The spark is in you! Mirror portraits during times of isolation" by Oliver Madlener

私たちの取り組みで大切にしている「灯り」をテーマに、チームメンバー(社員)を対象にしたアートコンテストを開催しました。チームメンバーによる投票で選ばれた三作品を紹介します。

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休校中の子どもたちにオンライン・スケッチノーティング講座

新型コロナウイルス感染拡大防止による休校中の子どもたちを対象に、ドイツのチームメンバーがオンラインワークショップ「Young Wacom」を開催しました。

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カスタマーサポートを通じてアーティストの「人生」を応援したい

アメリカでカスタマーオペレーションを担当するアレックス・ダフィーは、アーティストを支援する新たなプログラムを立ち上げました。このプログラムを立ち上げるきっかけとなったアーティストのデボン・ブラッグ氏との物語について、アレックスに聞きました。

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3.KOPPAのはじまり/
「旅するKOPPA」の物語

KOPPAのはじまりは2019年4月。伊藤さんの展示制作がきっかけでした。展示後も「また誰かに使ってもらえるものにしたい。」KOPPAに込められた思いをお聞きしました。

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2.もう、壊さなくていい/
「旅するKOPPA」の物語

自分たちで組み立てて、広げて、しまって、また一緒に旅に出る。壊すのが当たり前であった展示什器の在り方を大きく変えた「旅するKOPPA」が誕生しました。

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1.「KOPPA」との出会い/
「旅するKOPPA」の物語

建築現場の端材を活かせないかと、建築家の伊藤維さんの呼びかけで生まれた家具「KOPPA」。ワコムとの出会いは小さな偶然がきっかけでした。

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私たちの灯り-“That Spark Inside”
by Simone Wolters

私たちの取り組みで大切にしている「灯り」をテーマにアートコンテストを開催しました。作品を通して、チームメンバーが大切にしている心の灯りの存在を紹介します。

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未来のエンジニアたちにマーケティングの講義

東京工業高等専門学校で技術者を目指す学生を対象にマーケティングの講義を行いました。

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ありがとうのページ

私たちの毎日を支えてくださっている「誰か」へ、ありがとうの気持ちを届けたい。チームメンバーから寄せられたメッセージです。

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未来の教育を考える
ライフロングインク×AI

学習中の視線データとペンの動きから、生徒個人の学習特性を明らかにし、個人に合わせた学習環境を提供する「教育向けAIインク」を開発しました。

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授業をもっと楽しく、クリエイティブに
Wacom Intuosを学校に導入

ブルガリアで働くソフトウエアデザイナー、ヨアナ・シメノヴァは、子どもたちのITクラスをもっと楽しくしたいとWacom Intuosを学校に導入しました。

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